下図のような振り子を考えます。糸(伸び縮みしない)の長さを ℓ
、重りの質量を m
、振れ角をθとします。 時間を t とすると、振り子の運動方程式は(1)式のように表せます(導出は省略)。質量 m
はこの運動方程式には関係しません。
さて、(1)式を解析的に解くことが出来ればよいのですが、残念ながらそれは出来ないということが分かってしまっています。 そこで、θが十分に微小である(角度にしたら10度以下ぐらい?)ときには、sinθ≒θの近似が成り立つことを利用して (1)式を書き換えます。 この運動方程式は解析的に解くことが可能であり(過程は省略。計算はやや面倒ですが、θをという指数関数 (λは定数)であると仮定すれば解けます)。その結果から、振り子の周期(左右に一往復するまでの時間)を T とすると、 という式が得られます。(3)式は、振り子の周期は重りの質量や振れ角には依存せず、糸の長さのみによって決まるという 「振り子の等時性」を表しています。 さて、いよいよ複数の振り子による"Pendulum Waves"が成立するための条件を考えます。と言っても難しいことではなく、 要するに全ての振り子について、周期の整数倍がある時間 Ta で揃うようにすれば良いのです。すなわち、n を整数として、 という式が成り立てば良いのです。(4)式を ℓ について解くと、 となります。例えば Ta の値を60秒とし、n
の値を様々に変化させて(5)式から導かれる糸の長さ ℓ に調節した
振り子を並べれば、60秒ごとに動きが元に戻る"Pendulum Waves"が成立することになります。 しかし…… でも、この条件って、θが十分に微小であるときにしか 成り立たないのでは? θがもっと大きいときにはどうなるの? という疑問が浮かんできます。そこで以下ではθが十分に微小ではなく sinθ≒θの近似が成り立たない、 より一般的な場合について考えてみます。 そもそも何故このような近似を用いたかと言えば、(1)式が解析的には解けない式であるからです。従って、 θがどんな値でも成り立つような、振り子の周期のより一般的な式というのも解析的に求めることは出来ません。 しかし、「物 理のかぎしっぽ」様(有志の方々による物理学関連の解説サイトです)によると、楕円積分という テクニックを用いることにより、より一般的な振り子の周期を、級数を用いた式として表示することが出来るそうです。 楕円積分の詳細や計算の過程などは上記のリンク先にありますが、内容はかなり高度であり、私自身が理解を しきれていませんので、ここでは計算結果だけを使わせていただくことにします(爆)。 振れ角の最大値を θmax とすると、より一般的な振り子の周期は という式で表せます(リンク先の式中では n
が用いられていますが、ここでは混同を避けるために m に変えてあります)。
ここで、(6)式で級数として表示されている部分はθmax にのみ依存するので、この部分を思い切って、(7)式のように θmax の関数 C(θmax) として置き換えてしまうことにします。 かなりシンプルな形となりました。(3)式と比較すると、C(θmax) が掛かっている以外はほぼ同じ形をしていることが分かります。 より一般的な場合では、振り子の周期は糸の長さだけではなく、振れ角の最大値にも依存するということになります。 「振り子の等時性」という性質は、θが十分微小な場合にのみ成り立つ近似的な性質であり、θが大きな場合には 性質が破れてしまうということが分かります。 ここで、(4)〜(5)式を導出したのと同様の手順で、より一般的な"Pendulum Waves"が成立するための ℓ の条件を求めてみると、 となります。(8)式と(5)式とを比較すると、Ta が
Ta/C(θmax) となっている以外は、全く同じ形をしているということが分かります。
すなわち、(5)式から導かれた"Pendulum Waves"が成立する ℓ の条件は、θが十分に微小ではない一般的な場合においても、 θmax が全ての振り子で同じであれば(ここ重要)条件として当てはめることが出来ます(もちろん周期の整数倍がそろう時間は、 Ta ではなく Ta/C(θmax) へとズレます)。 参考文献 :
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